事務所理念

 2016年 5月8日
【特許★★】延長登録された特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)
平成28年3月30日(平成27年(ワ)第12414号)(東京地裁民事第29部、嶋末裁判長)

 2016年 5月8日
【特許★★】主たる引用発明に基づいて、2つの段階を経て相違点に係る本件発明の構成に想到することが容易でないとされた事例
平成28年3月30日(平成27年(行ケ)第10094号)(知財高裁第4部、高部裁判長)

 2016年 4月1日
【特許(審決)】PBPクレームから製造方法への訂正を認めた訂正審決
平成28年3月15日(訂正2016-390005)(審判官:丹治彰(審判長)、黒瀬雅一、藤本義仁、吉村尚、千葉成就)

 2016年 4月1日
【特許★★★】化学物質の製造方法に係る特許発明について、均等侵害を認めた第一審判決を維持した事例。
平成28年3月25日(平成27年(ネ)第10014号)(知財高裁大合議、設樂裁判長)

 2015年 11月27日
【特許】拒絶審決と異なり、実施可能要件・サポート要件を認めた事例
(進歩性欠如を理由に、拒絶審決は維持された。)

知財高判平成27年11月24日(平成27年(行ケ)第10017号)(2部、清水裁判長)

(判決要旨)
拒絶審決は実施可能要件及びサポート要件違反と判断したが、知財高裁は各要件を認めた。(もっとも、審決の進歩性欠如の判断は維持されたため、審決は維持された。)
実施可能要件については、証拠を参照して、「様々な治具等によって空間内の特定の位置に固定されることは,技術常識」「間隔の精度をどの程度とするかは,各分離ディスクの固定手段により適宜調整可能」とした。
サポート要件については、発明の詳細な説明から発明の課題を認定した上で、「間隔保持部材の有無は,上記各課題の解決には関連しないのであるから,間隔保持部材がない構成が記載されていないと解することはできない」とした。

(コメント)
実施可能要件については、出願時に当業者が実施できたことを裏付ける「技術常識」、及び、明細書に明記されていない要素が「適宜調整可能であること」を示す証拠資料を、審決取消訴訟段階においても、改めて調査し、提出することが有用である。
サポート要件の適否基準は、「発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か」である(平成23年(行ケ)第10147号等)。この観点から、本判決も示しているとおり、本願発明の「課題」を位置付けが重要である。
なお、本判決は、実施可能要件とサポート要件とを峻別して当て嵌めている。従前は両要件を表裏一体と考える裁判例も散見されたが、フリバンセリン事件(平成21年(行ケ)第10033号)以降、近時の裁判例においては、両要件を峻別する考えが主流である。

(判決の抜粋)
(1) 特許法36条4項1号について  …複数の部材を相互にはんだ付け又は溶接により接合する場合に,当該複数の部材は,一定の時間相互に近接保持される必要があるが,様々な治具等によって空間内の特定の位置に固定されることは,技術常識といえる。例えば,従来,?フルフェイスホイール用リムとディスクを溶接する際に,治具によって両者を仮固定する(甲12の1),?動圧軸受を構成するシャフトとスラストプレートとを溶接する際に,両者を調芯用治具に仮固定する(甲12の2),?電動機ロータと支持ディスクとを溶接を含む手段で接合する際に,組立て治具により両者を仮固定する(甲12の3),?ベースとフィールドスルーとを,はんだプリフォームによりはんだ付けする際に,テフロン製治具で両者を仮固定する(甲12の4)ことが開示されており,このことは,本件発明のように,多数の分離ディスクが含まれる場合も同様である。そして,当業者にとって,各分離ディスクの間隔をどの程度とするか,また,その間隔の精度をどの程度とするかは,各分離ディスクの固定手段により適宜調整可能なことである。
(2) 特許法36条6項1号について …本願発明は,分離ディスクの凹部内に配置されている封止部材による摩耗などに起因するディスク強度の問題や…,これを回避するためねじ接続を採用し,さらに,分離ディスクを圧縮する構成によった場合の各分離ディスクの対称性や相互の位置合わせへの悪影響といった問題…を解消するために,金属製のディスクをはんだ付け又は溶接によって接合するという構成を採用したものであるところ,間隔保持部材の有無は,上記各課題の解決には関連しないのであるから,間隔保持部材がない構成が記載されていないと解することはできない。…
被告は,遠心分離機においては遠心分離を受ける液体用に分離室を多くの薄い流動空間に分け,分離ディスク間の隔離部材(間隔保持部材)を配置することが一般的であり,適切に遠心分離を行うために分離ディスク間の薄い流動空間を正確に形成する必要があることは明らかである,と主張する。しかしながら,被告の摘示する特表平11?506385号公報(甲2)には,間隔保持部材を機能させる場合,すなわち,間隔保持部材が必要な場合には,分離ディスクに固定するとの記載しかなく,間隔保持部材が必須ということは読み取れないし,他にこの点を認めるに足る証拠もない。
◆判決本文
(Keywords)36条、実施可能要件、サポート要件、アルファ、ラヴァル

 2015年 11月27日
PBP最高裁判決について
著名な裁判例の一つに、プロダクト・バイ・プロセス(PBP) クレームの解釈に関する最高裁判決がある。
同最判は、傍論ではあるものの、PBPクレームについて、  充足論における発明の技術的範囲の解釈と、無効論における発明の要旨認定とを、(少なくとも原則として、)同じ基準により行うことを示した。(※千葉裁判官の補足意見、山本裁判官の意見も参照)
同判決の直接の射程距離はPBPクレームの解釈論かもしれないが、(知財高裁大合議判決に続いて、)最高裁としても統一的クレーム解釈を行う姿勢を読み取れると評価することも可能であろう。
リパーゼ最高裁判決以後の近時の下級審裁判例における、発明の要旨認定と技術的範囲の画定におけるダブルスタンダードの解消については、以下のURL中の、「発明の要旨認定と技術的範囲のダブルスタンダードの解消」という記事が参考になる。

 2015年 11月27日
【商標】商標権の行使が権利濫用とされた事例

東京地判平成27年11月13日(平成27年(ワ)第27号)(40部、東海林裁判長)

(判決要旨)
株式会社ディーエイチシー(原告)が、台湾DHCからバッテリーテスターを輸入して、「DHC-DS」という標章を附して販売していた被告に対し当該標章の使用中止を求めて交渉していたが暗礁に乗り上げたため、「DHC-DS」の文字につき,指定役務にわざわざバッテリーテスターを含めた上で原告商標として出願し,その登録を得ると直ちにこれを被告に対して行使した事案において、権利濫用として請求が棄却された事例。

(被告標章)※被告標章

(コメント)
商標権の行使が権利濫用とされたリーディングケースは、最高裁平成2年7月20日判決(民集44・5・876、判時1356・132)〔POPEYE商標事件〕である。近時の下級審では、大阪地判平成25年(ワ)第7840号〔メロン熊商標事件〕がある。
同論点については、知的財産法の理論と実務第3巻―商標法・不正競争防止法―「10 商標権の行使と権利の濫用」(高部眞規子)(新日本法規出版)が参考になる。

(判決の抜粋)
台湾DHC(執筆者注:訴外であり、被告の輸入元)はその設立から30年近くを経た会社であり,諸外国で「DHC」の商標権を取得している上,バッテリーテスター等について相当な製造実績を有している。そして,被告はこの台湾DHCからバッテリーテスター等を輸入・販売しており,現在に至るまで台数にして…,金額にして…規模の販売実績を有しているものである。
また,被告は,その使用する標章をめぐって原告と交渉する中で,「DHC JAPAN」との標章の使用をやめて「DHC-DS」という標章を使用し始めたものであって,被告も原告の利益に一定程度の配慮をしていることがうかがわれ,この点に特段の背信性等があるともいい難い。
そして,被告が使用し始めた「DHC-DS」との標章(被告各標章)についてみても,「DHC」との部分のみならず「DS」という部分も造語であって(被告は「大作商事(だいさくしょうじ)」の「だ」と「し」の頭文字であると説明する。),この部分だけが特定の観念を有するものでもないし,文字の大きさも「DS」の部分は「DHC」の部分と同じかやや小さい程度にとどまるのであって,被告各標章全体をみても,「DHC」の部分のみが著しく強調されているというわけでもない。
他方で,原告は…「電気磁気測定器の小売」を行ったことはなく,ましてやバッテリーテスターの製造・販売を行ったこともない。しかるに,原告は,被告の使用する標章をめぐって交渉を積み重ねている中で,被告が譲歩を示して,当初原告から商標権の侵害であるとして使用の中止を求められた「DHC JAPAN」を「DHC-DS」という標章に変更してこれを使用していることを十分認識しながら,被告との交渉が条件が折り合わず暗礁に乗り上げたとみるや,自らの標章につき不使用取消審判を受けているにもかかわらず,あえて被告の使用していた「DHC-DS」の文字につき,指定役務にわざわざバッテリーテスターを含めた上で,原告商標として出願し,その登録を得ると,直ちにこれを被告に対して行使したことが認められる。
以上の諸事情に照らせば,原告が,被告に対し,原告商標権に基づいて被告各標章の使用の差止めを求めるとともに,被告各標章を付した商品の廃棄等を求めることは,権利の濫用に当たり,許されないものといわざるを得ない。
◆判決本文
(Keywords)商標、権利濫用、DHC、バッテリーテスター、台湾、大作商事

 2015年 4月
応用美術の著作物性に関する最新裁判例」(平26(ネ)10063号)
応用美術の著作物性については、従来、美術の著作物と比較して、創作性のハードルが高く設定されるという考え方が主流でした。近時、ドイツ等の諸外国においては、応用美術と美術とで区別しない考え方が多数であると報告されていたところで、本判決は、そのような諸外国の実務に近付いたと評価できます。

 2015年 4月
高石秀樹(弁護士・弁理士・California州弁護士)が ウェブサイトを開設しました。

 2015年 4月
審判実務者研究会報告書2014」が公開されました。
審判官、企業の方々、弁理士、弁護士が一堂に会して議論した結果が纏まっています。
非常に参考になる分析がなされていますので、是非ご参照ください。

 2015年 4月
進歩性の審査基準改訂案が公表されました。
産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会
第3回 審査基準専門委員会ワーキンググループ 議事要旨

 2012年 5月24日
〜特許料等の減免制度に関する法改正のお知らせ〜
個人・法人、研究開発型中小企業及び大学等を対象に、審査請求料と特許料の納付について、一定の要件を満たした場合、減免措置が受けられます。平成24年4月1日に施行された特許法の改正により、審査請求料および特許料の減免制度の要件が緩和されました。詳しくは、特許料等の減免制度に関する法改正についてを御参照ください。